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そーすけさんの日々

西洋骨董洋菓子店

2008年を通して思うんですが

今年は、少女マンガの名作によく巡り合う年だったような気がします。

作者でいえば、

よしながふみさん、羽海野チカさん、川原泉さん、田村由美さん、樹なつみさん

作品単位だと、ここはグリーンウッド などなど

今まで、少女マンガに興味がないわけではなかったのですが

今年は偶然、名作少女マンガに巡りあったわけですが

中でもやはり、よしながふみさんにはまったのは結構大きくって

BL作品を買うきっかけにもなった作者さんです。


で、そんなこんなで今回は

西洋骨董洋菓子店を紹介したいと思います。

アニメ化の少し前に、3冊セットの文庫版が出て

私は、それを購入してはじめて読んだので

フラワーオブライフ、大奥など一般向け少女マンガ

執事の分際などのBL作品などを一通り読んだ後に、読むことになったのですが

とてもおもしろく、またでてくる洋菓子が本当に美味しそうで

何度も読み返すマンガになりました。


おおすじのストーリーとしては、


午前2時LO 2時半閉店

使われている食器、グラスは高価なアンティーク

そんな、変わった洋菓子店 アンティーク

アンティークの店員は全員イケメン揃い

ただ、全員・・・少し癖があって。


超辛党で、ケーキの味に興味のないオーナー件ギャルソンの "橘 圭一郎"


パリの三ツ星レストランのパティシエだった "小野 裕介"
彼は、"魔性のゲイ"と呼ばれており
彼が好きになった男はノンケだろうとたちまち彼に夢中になってしまう
その為に色んなお店でトラブルに巻き込まれ
首にされてきた経歴を持っている


才能があるボクサーで、またイケメンであったことから
リングの上のジャ○ーズと呼ばれていた 天才ボクサーの"神田 エイジ"
網膜剥離により、ボクサーの生命を断たれ
もともと甘い物が好きだったエイジは、偶然アンティークと出会い
パティシエとして "小野 裕介"に弟子入りする


"橘 圭一郎"の家で面倒をみてもらっていた為に
今でも、"橘"の事を"若"と呼び付き人をしている"小早川 千影"
自分では、"橘"の面倒をみているつもりだが
まったくの逆で、卵焼きも上手く焼く事が出来ない


美しいが、一癖も二癖もあるキャラクター達が繰り広げる

洋菓子と、洋菓子を買いに来るお客さんの繰り広げる

ある意味小規模な話で、ちょっとぷっと笑っちゃうような話がメインなのですが

和気あいあいとしていた、どちらかというと

読んでいて、すっきりするような話が多い今作品なのですが

中盤から、少しシリアスな話になってきます。

甘いモノ、洋菓子にそんなに興味がない

橘 圭一郎が何故アンティークという洋菓子店を開いているのか?

これが、結構重要になっており

ここからは、ネタばれアリアリで最後の最後まで紹介しちゃおうと思っているので

ネタばれが気になる方は、ここから先は読まないようにしていただけると助かります。




「君は、橘 圭一郎君か」

「そうです。
 あの時は、結局捜査のお役には何も立てなくって」


「どうして・・・今まで!!
 私は私は一体君にどう詫びたら・・・!!」

「そんな必要は無いですよ
 警察はやるべき事はやったんだ
 確かに誘拐犯は挙げられはしなかったけど
 誘拐された子供はちゃんと生きて帰ってきて23年経った今
 こうして元気にケーキ屋をやってる
 それで十分でしょう
 それよりもこれで二度とうちのケーキを買いに来なくなるってのは無しですよ!
 さて、デリス・オ・フランボワーズ どうなさいます?」


以前よりアンティークの常連だった、元・刑事の男

この彼の発言で、橘が昔誘拐にあった事があると知ったアンティークの従業員一同



「誘拐事件以来、俺はすっかり可哀想な子供になっちまって
 親類はみんな腫れ物に触るみたいに俺を扱うのさ
 俺の言う事ならどんなわがままでも聞いちまう
 そのくせ俺を一人にさせとくのは心配で仕方なくて
 三十過ぎた息子にお目付け役をよこしてくる始末だ
 それが千影だよ
 俺を誘拐した犯人について たった一つ覚えてる事がある
 ケーキが好きで毎日俺は、奴が買ってきたケーキを食ってたんだ」


ここが語られるのが、全3巻中 2巻の中盤で

ここから物語は、ガッーと!終わりへとむかっていき

各登場人物の闇だったり、トラウマだったりが語られていきます。

橘は、三十過ぎたとはいえあの誘拐された時の夢を見てうなされています。

また犯人が現在、何をしているか・・・というのも描かれていきます。


そんな中で、また誘拐事件が橘の近辺で起きます。

誘拐された子供の年齢も橘が誘拐された年と一致します。


未成年者
略取・誘拐罪の時効は5年で成立する

もう俺を誘拐した人間を罰するのは永久に叶わない



誘拐された子供は死体で発見され

それを解剖した警察は、胃の内容物から

子供は死ぬ前にケーキを食べた事実を発見する

そして その材料などから、このケーキが

アンティークで、販売されているケーキだと判明し

橘に警察から捜査協力の要請がくる


俺は

俺はこの日を待っていたんじゃないのか?

俺はこの日を待っていたんじゃないのか?

美味いケーキ屋にしようと思った

どんなに遠くからでも洋菓子を好きな人間なら

必ず一度は訪れたくなるような店に

小さな店にしようと思った

店内全てに自分の目が届くような店に

そして営業時間はなるべく遅くまで

職種も年令も性別も関係なく

どんな人間でも気軽に洋菓子を買える店に

そういう店にしようと思ったのは

全てこの日に



捜査に協力した橘

アンティークに監視カメラが設置される

怪しいお客が来ないか、張りこむ刑事達

閉店間際、駆け込んでくる一人のお客


「まだ、大丈夫かしら?」



「はい!もちろんでございますとも!お決まりで?」


「ああ 良かった
 まだあった 紅茶のシュークリーム三つお願い」


シュークリームを落としてしまう女性


「ああ!どうしよう!」


「ああ お気になさらず
 商品の方はまだありますので 今お出ししますよ」


「ご・・・ごめんなさいね ちょっと・・・」



「少し休んでいかれますか?
 車でご自宅までお送りいたしましょう
 どうせもう店閉まいですし もともとうちはケーキの配達もやってるんですよ
 どうぞ遠慮なさらず」


刑事にメールを送り、橘は彼女を車で送る


玄関まで、送り見届ける橘

が、彼女の長袖から見える怪我 そして自分を見る目に違和感を感じた橘は

閉じようとする玄関に手をかける


「お子さん?」

「え?・・・・ええ!
 ええそう!そうなの!うちの子!」


ダン


靴も脱がず、家に入り2Fへと上がっていく橘


「ちょ 嫌だ!!あなた土足で・・・っ何するの!?ちょっと!?
 ちょっと待って!!ちょっと本当にやめてちょうだい!!
 ねぇ!!ねぇ!!
 やめなさい!!やめて!!あなたね!警察呼びますよ!」



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「どうぞ」




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「やめて」


もしかしたら人に言えないような事をされたのかもしれないわ
もしそうだったら・・・!!




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「開けるんだ
 お前はもう終わりだ
 すぐに警察が来る
 もうお前をどこにも逃がさない
 開けろ
 開けるんだ」


本当はあいつにあんな事言いたくなかったんだ


犯人はまだ24歳の青年だった。



結果として、捕まえた犯人は橘が追いかけていた誘拐犯とは違うのですが

三人目の被害者の子は助かり

犯人が、ケーキを被害者に食べさせたのは

被害者の子供が

安らかな気持ちで天国に行けるようにするための儀式だったという事が判明します。


で、この事件のあと

千影は、橘のもとを去ります。

「若が大丈夫だから
 若がもう私がいなくても大丈夫だからです。
 お元気で」

そして、エイジもパティシエの修業にフランスへ

アンティークが出来た当初と同じ 橘と小野の2人だけがアンティークに残ります。

「神田君や千影さんは今頃何してるのかな
 これじゃまるで最初に橘と二人でこの店を始めた頃に戻ったみたいだ
 なのに不思議だね
 そんなに長い年月が経ったわけじゃない
 この窓から見える 家並だってあの頃とちっとも変ってない
 なのに・・・
 今は店に二人だけだった頃がひどく懐かしい気がするよ」

寝ている、橘

過去の誘拐事件に踏ん切りがついたようにみえる橘だったが

あの日の夢をみてうなされて飛び起きる




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「ふ はは!
 全くな!千影の言う事なんかを真に受けた俺が馬鹿だった!
 やっぱり思い出せねぇし
 忘れられねぇし
 怖いんだよ!
 ・・・いい天気だ
 さて!メシ食って今日もケーキ売りにいくか!」



ありがちですが、

嫌だった事を受け入れ前に進んでいくラストという事でわりとすっきりした終わりです。

橘にとって、ケーキを売るという行為が復讐の手段のようなものだっただけに

最後の ケーキ売りにいくか! この台詞で橘の想いが昇華されているような感じで

個人的には、凄く良い読後感をえる事ができました。

また、自分を誘拐した犯人と橘が出会うエピソードなど

本編には、含まれており

興味のある方にはぜひ読んで欲しい作品です。
by souhu090 | 2008-12-19 23:33 | コミック